
弊社開発装置
巻線型誘導電動機のコレクタリング火花常時監視装置
- 【1】はじめに
- コレクタリング周りの定期的な保守点検を忘れたり、又、冬季の低湿度環境や長期にわたる低負荷運転に起因するブラシの異常摩耗等が原因で、ブラシの面圧が低下してブラシとコレクタリング間で火花が発生し、コレクタリングの摺動面が損傷して修理する巻線型誘導電動機が弊社でも年に数台の割合で発生しています。これを何とか防止できないかと考えてみました。
- 【2】コレクタリング火花常時監視装置
- コレクタリングとブラシ間で発生する火花の号数を表示すると共に、指定した火花が発生した場合警報を出します。
- 1) 装置の概要
- (1) 原理
- コレクタリングとブラシ間に火花が発生すると、ロータ回路に高周波(数kHz)の電流が流れるようになります。それを高周波CTで検出し信号処理することにより火花号数を表示します。
- (2) 装置の構成
- 電動機の信頼性に影響を与えないように、センサは非接触として電動機のコレクタ室直下の二次ケーブルにブッシング形高周波CTを取り付ける方式としました。
図1に装置の構成図を示します。
- (3) 火花の号数決定
- 火花の号数決定は以下の方法で行っています。図2に低周波成分をカットした単発の火花波形を示します。火花波形は正負に振動する波形なので、図3の様に絶対値回路により正の絶対値出力に変換後積分回路にて積分出力から火花号数を決定しています。図4に火花号数が2号、4号、6号、8号の場合の火花写真とオシロスコープ上の正の絶対値出力及び積分出力波形を示します。
- 2) 装置の詳細
- 試作した装置の外形写真を図5に示します。装置はセンサと測定器部より構成されます。センサは、二次電流や二次ケーブルの太さで大きさを変更します。
- 図6に測定器部の前面、図7に背面の写真を示します。
- A.メータ出力は、毎300msのU相V相W相の中の最大値を表示します。
- B.LEVEL3の火花検出LEDは、U相V相W相の中で一つの相でも3号火花になっていれば点灯します。
- C.ALERT検出は、U相V相W相どれでも条件が満たされれば出力されます。
- D.ALERT 出力は、オープンコレクタ出力が独立2系統、ALART=5V出力が1系統となっています。
- 3) 外部ノイズの影響
- 同一電源にインバータ接続されていると、インバータノイズが装置に流入してきます。そのままでは装置が誤動作しますので、インバータノイズ除去回路を採用して問題解決しています。
- 【3】遠隔監視への拡張
- 火花常時監視装置に市販のデータロガー無線通信装置をつけて、保守担当者のパソコンや携帯電話に警報を出力する事が出来ます。構想図を図8に示します。このデータロガー無線通信装置は、親機1台で126台の子機と通信できることから、天井クレーン用を含む複数の巻線型誘導電動機を使用している工場では、警報の配線敷設を省略できしかも一括監視が可能になります。
- 【4】他機種への転用の可能性置
- 本装置は二次抵抗制御の巻線型誘導電動機で動作確認を行っています。従って二次側に整流素子を使った制御(セルビウス制御、超同期セルビウス制御等)については正常に動作するか確認していません。そこで是非その機会をいただき、ユーザの皆様と一緒になって実用化したいと考えます。
- 同期機については、直流発電機励磁の場合は問題なく使用できますが、整流素子を使った励磁方式を採用している同期期については同様に装置が正常に動作するか確認していません。そこで是非その機会をいただき、ユーザの皆様と一緒になって実用化したいと考えます。
- 【5】その他
- 本装置は、高電舎株式会社との共同製作品です。